乙一
(オツイチ)

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著作リスト
(2004/6/30現在、順不同)

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◆小説◆
夏と花火と私の死体
天帝妖狐
石ノ目
暗黒童話
きみにしか聞こえない CALLING YOU
さみしさの周波数
失踪HOLIDAY
死にぞこないの青
暗いところで待ち合わせ
GOTH リストカット事件
平面いぬ。
失はれる物語
ZOO

◆共著・原作◆
くつしたをかくせ!(絵本)
きみにしか聞こえない(漫画)
GOTH (漫画)
死にぞこないの青(漫画)
はじめ(漫画)
傷 -KIZ/KIDS-(漫画)
手を握る泥棒の話(ブロードバンド映画)
他。
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 16歳の時に書いた「夏と花火と私の死体」で、第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞し、17歳でデビューする。

 主に「せつない系」と呼ばれる作品を書くと認識されているが、私は氏の書く「せつなさ」はあくまでも付随物であると考えている。
 書く作品は、「せつなさ」「暗さ」「暖かさ」「狂気」と共に「死」がつきまとっている。あとがきや日記では、ひょうひょうとした奇人という印象を受けるのだが、実は繊細で脆いのではないかと思う。

 デビュー作である「夏と花火と〜」からして、《幼馴染みに殺された小学生の死体》の一人称小説という奇抜なもので、集英社や幻冬舎から出ている作品(石ノ目、天帝妖狐、暗黒童話、死にぞこないの青etc...)には大体、死人や屈折した人間が出てくる。それとは逆に、角川から出ている作品(きみにしか聞こえない、さみしさの周波数etc...)は「せつなさ」が全面に押し出されている。
 もちろん例外もあり、幻冬舎から出ている「暗いところで待ち合わせ」は暖かく、角川から出ている「GOTH」は暗い。しかしその両作こそが乙一作品でも一二を争う名作だから面白い。

 登場人物の特徴として、集英社系の作品は周囲から迫害されたり白い目で見られる青年が、角川系の作品は周囲に上手くとけ込めない少年少女が多い。その上で丁寧な心理描写を得意とするので、文章の不快感は思ったよりも少ない。
 シチュエーションやキャラクターだけで見ると、暗く絶望的にしかならなさそうな話の中でも、思わず胸を熱くするようなエピソードを描くために「せつない系」だと言われるのだろう。
 著者のセンスと読み手のセンスの相性が良ければ、《心の一冊》になりうるという作品が多いのだが、相性が悪ければ吐き気がするほど不快になる可能性さえある。

 お薦めの作品は、「失はれる物語」、「GOTH リストカット事件」、「暗いところで待ち合わせ」の三作。前者二つはハードカバーなので少々値が張るが、作品のクオリティは高い。特に、「失はれる物語」は角川系の作品の名作選、いわば乙一ベストアルバムといった位置づけだと思って良い。
島田荘司
(シマダ・ソウジ)

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◆小説◆

◆共著・原作◆
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 準備中。
田中芳樹
(タナカ・ヨシキ)

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◆小説◆

◆共著・原作◆
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 準備中。
成田良悟
(ナリタ・リョウゴ)

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著作リスト
(2005/3/13現在、順不同)

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◆小説◆
・バッカーノ!The Rolling Bootlegs
・バッカーノ!1931 鈍行編TheGrandPunkRailroad
・バッカーノ!1931 急行編TheGrandPunkRailroad
・バッカーノ!1932 Drug & The Dominos
・バッカーノ!2001 The Children Of Bottle
・バッカーノ!1933 上 THE SLASH -クモリノチアメ-
・バッカーノ!1933 下 THE SLASH -チノアメハ、ハレ-
バウワウ! Two Dog Night
デュラララ!!
デュラララ!!×2
ヴぁんぷ!
Mew mew!
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 第九回電撃ゲーム小説大賞にて金賞受賞作「バッカーノ! The Rolling Bootlegs」でデビュー。

 明確な主人公を定めない群像劇のような小説を得意とする。この人の小説の魅力=キャラクターの魅力だと考えて良い。
 作品の特徴として、どんな陰惨な状態でも、どんな複雑な状態でも、確固たるポリシーで明るく笑い飛ばすような――もしくは確固たる意志で受け止めるようなキャラが出てくる事が多い。
 先程も書いたが、キャラ魅力=小説の魅力なので、キャラが不発な時は面白さが激減してしまう。その代わり、キャラが立っている時は本当に面白く、勢い、力があふれている小説となる。
 出てくるキャラクターに軽く狂っているのが多いのも特徴か。そして大概狂っているキャラにこそ魅力があるのが面白い。

 お薦めの作品は、何と言っても「バッカーノ!」シリーズ。
 シリーズとは言っても独立した物語として読めるのだが、第一作「バッカーノ! The Rolling Bootlegs」から読み、それから年代順に読んでいくと、面白さが増す。
 私はかつてこれほどまでにキャラクターが多く、そのそれぞれに魅力があり、物語があるという小説は、田中芳樹氏の「銀河英雄伝説」しか読んだことがない。無論作風が全然違うどころかジャンルも何もかも違うし、キャラクター描写の系統も全く別だ。
 田中芳樹氏の「銀河英雄伝説」は第三者の目線、神の目線(氏の小説風に言うならば「後世の歴史家」の目線の時も多い)で冷静に描写しているのだが、こちらは若さゆえの勢いが暴走していると言えるほどパワーで、未熟さを跳ね飛ばして描写している。私はそのパワー、キャラクターの生き生きとし過ぎている動きに惚れ込んだ。

 ただ、「バッカーノ!」以外のシリーズは、どれも「面白いジュニアノベル」止まりで、バッカーノほどのパワーはないのが残念ではある……。まあ、どれも「面白いジュニアノベル」である時点で実は大した物なのだが。
深沢美潮
(フカサワ・ミシオ)

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著作リスト
(2005/3/13現在、順不同)

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◆小説◆
フォーチュン・クエスト(全8巻)
新装版フォーチュン・クエスト(全8巻)
新フォーチュン・クエスト外伝(1〜3)
フォーチュン・クエスト バイト編
新フォーチュン・クエスト(1〜10)
フォーチュン・クエストL(1〜3)
デュアン・サーク(全8巻)
デュアン・サークII(1〜3)
青の聖騎士伝説
TETORA
サマースクールデイズ
バンド・クエスト(全3巻)
菜子の冒険 猫は知っていたのかも。
IQ探偵ムー(1〜2)

◆共著・原作◆
新フォーチュン・クエストリプレイ
フォーチュン・クエストRPG
フォーチュン・クエスト・コンパニオン
深沢電気有限会社
フォーチュン・クエスト(OVA)
フォーチュン・クエストL(TVアニメ)
フォーチュン・クエスト外伝(ドラマCD)
Fortune Quest ダイスをころがせ(ゲーム)
フォーチュン・クエスト 食卓の騎士たち(ゲーム)
フォーチュン・クエスト(漫画)
デュアン・サーク(漫画)
デュアン・サーク 詩人の称号(漫画)
他。
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 若年層向けファンタジーの開拓者の一人。
 女性ならではの視点と、丁寧な描写、表情豊かな生き生きとしたキャラクターなど、優しい印象を受ける文章を書く。
 また、かなりのゲーム好きで、TVゲームやTRPGを問わずプレイする。

 代表作である「フォーチュン・クエスト」は、TVゲームの普及を逆手に取った斬新なファンタジーで、世界設定に《冒険者》、《レベル》、《クエスト》という概念が組み込まれている。冒険者割引やローンといったものから、通販カタログやシナリオ屋というものまであるため、一般的な「リアリティのあるファンタジー」とはかけ離れると思われがちなのだが、世界観は綿密で生活感があふれているために、「生きたファンタジー」となっている。
 ゲーマーならではの視点、女性ならではの視点が入り交じり、丁寧だがしつこくなく、解りやすいが単純ではない、絶妙なバランスで生き生きと異世界がえがかれているのだ。

 若い世代にはとても入りやすい小説を書く。
 小学校5年生だった当時の私は小説にまったく興味のない状態で姉から「フォーチュン・クエスト」を貰い、「なんじゃこの少女漫画みたいな変な小説は」とひねくれながらも姉の手前読んでみたところ、大いにハマった。ここから小説好きが始まったと言ってもなんら過言ではない。

 欠点としては、いわゆる「解りやすく読みやすい小説」を書き続けているために、しばしば文章が稚拙に見えることがある。これは、若年層向けの小説を若年ではない者が読むからそう感じるのであって、恐らく筆者が読んで欲しい年齢層には適しているのだろう。
 ただ、別のジャンルや別の趣旨といった、普段とは違う層に向けた小説で書いてもその癖が出ていることがあり、その時は小説の印象を下げてしまう事もある。

 お薦めの作品は、「フォーチュン・クエスト」シリーズ一択。これが気に入れば「デュアン・サーク」シリーズも楽しく読めるはずだ。