なんでもレビュー
FRONT MISSION 4 |
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メーカー:スクウェア・エニックス | 機種:プレイステーション2 | 点数7.0 | |
価格:6800円(税別) 廉価版:2940円(税込み) |
ジャンル:ドラマティックSRPG | 発売日:2003年12月18日 廉価版:2006年5月11日 |
ヴァンダー・パンツァー(通称ヴァンツァー)という機動兵器を用いて戦う、シミュレーションRPG。 名作「フロントミッション」の続編で、第1作より6年後の世界が舞台。 フロントミッションシリーズの舞台は、近未来の地球だが、その設定のリアルさと重厚なストーリーが受けている人気シリーズである。 世界情勢は今と似て非なるものとなっており、大国と呼ばれるものは少々姿を変えています。例えば、南北アメリカが合わさって出来た「ニューコンチネント合衆国(以下USN)」、バンコク経済帯を元に、東南アジアやオーストラリア、日本などが加盟する「オシアナ共同連合(以下OCU)」、ロシアや東欧諸国の集まった「ザーフトラ共和国」、そしてECなど、それぞれ大きな国家集合体となっています。 第1作目は、太平洋上に隆起した新しい島「ハフマン島」の所有権を争うOCUとUSNの抗争、そこで起きた「第二次ハフマン紛争」事件と、その裏の真実について。 2作目は、OCU領内のアロルデシュ(現在のバングラデシュ)人民共和国で起こったクーデターと、OCUの陰謀について。 3作目はかなり複雑で、「無害な核兵器」を作る事を可能とする金原子核線理論を発表した天才科学者エミール・クラムスコイと、日本の大学生である武村アリサ、この両名のストーリーから選択してプレイすることが出来る。主人公は両編ともアリサの兄・和輝である。些細なきっかけから、まったく違う勢力のストーリーを追う事が出来るぶん、説明は難しい。 そしてこの4作目である。 時間軸としてはFMA(同シリーズのリアルタイムシミュレーション)→FM1→FM4→FM2→FM3という流れになる。 主人公は2人。エルザとダリルである。 エルザはECのイギリスに拠点を置く組織、陸上新戦術研究機関「デュランダル」の新入隊員で、ダリルはUSN陸軍の不良兵士だ。性格も性別も活動拠点もまったく違う2人を主人公に据えて、シリーズ初のPS2作品となる。 システム的な事を書きましょう。 エルザとダリルの2人を主人公に置いたとは言え、前作のように序盤で分岐するとか、2種類のストーリーがあるわけではない。 言うなれば、1面2面はエルザ、3面4面がダリル、5面6面7面がエルザといったふうに、交互にプレイすることになる。 戦闘で勝利すると、EPと資金が貰える。EPは経験値だと思ったら解り易いだろう。資金は壊れた機体の修理代や、壊れたパーツの修理代などを引いた額が貰える。 キャラの成長はEPによって行う。 まず、EPを消費してアビリティを買う。アビリティは戦闘時に発動するスキルや、常駐型のスキル、コマンド選択型のスキルの他、回避率や戦闘時の行動速度、武器の熟練度や、スキルスロット、リンクポイントや、ステータス障害耐性などが購入できる。 ステータス障害とリンクポイントについては後述する。 キャラにはそれぞれ最初に買えるアビリティが決まっている。それが物足りなかったり、買いつくした場合は、上位のアビリティを買うために「ランク2」をEPで買う。ランク2を買い尽くしたりすれば、今度はランク3を買う。これを最高位であるランク6まで繰り返す。 アビリティを買うのもランクを買うのもEPである。 しかし、どうしてもそのキャラでは覚えられないスキルや、武器熟練度がある。その際は、コンピューターを購入する。これはEPではなく、資金で購入する必要がある。コンピューターはたとえば「スナイパー1」や「スキルスロット」といった内容で、今までのFMシリーズのコンピューターとはまったくの別物である。コンピューターとは名ばかりの、アビリティまとめ売りだと考えたほうがいい。 問題は、時間さえかければ、どのキャラでもまったく同じ技能を覚え、ほぼ同じパラメーターに出来るという事か。元々キャラクターの個性付けに難があるので、下手するとキャラの個性がまったく無くなってしまう。 軽くまとめると、「戦闘で勝つとEPと資金がもらえる。資金では機体・武器・コンピューターを買え、EPではスキルや武器熟練度やパラメーターが買える」という事になる。なお、ダリルだと資金は手に入りやすいがEPが足りず、エルザだとEPは手に入りやすいが資金が手に入りにくいという状況になる。これを打開する方法はない。シミュレーターを使用することにより、資金・EP・隠しパーツが手に入るが、満足の行く状態にするにはどれも忍耐が必要だ。というか、本編よりシミュレーターの方が難しいという状況が多々あるので、そちらの方に時間を取られるかもしれない。 戦闘シーンは×を押す事により飛ばすことが出来る。カーソル移動も×を押しながらだと高速移動し、ヴァンツァーの移動や一部戦闘シーンなどは○で早送りが出来る。この辺りはプレイヤーにとっては嬉しい事だ。 また、マップが3Dになったため、360°回転することが出来、ズームイン・ズームアウトも可能。マップに画面のヴァンツァーもよく作られていて、坂の途中に立っていると、ちゃんと姿勢制御するような形で立ち、戦闘でスナイプをして片膝を付いた後だと、マップ画面に戻っても片膝を付いている。 戦闘行動時に重要になってくるのはAPという数値で、移動するにも攻撃するにも、特定のスキルを発動させるにも、これを消費する。APは最大値も毎ターン回復する値も決まっているが、これもパイロットのセットアップ時にEPを費やす事で増加させることができる。 続いて、プレイした感触などを。 先に結論から言うと、微妙なゲームである。 良い点と悪い点を両方書いて行きたいが、見る人によっては多少のネタバレと感じるかも知れないので、そういうのが気になる方はここで引き返すか、充分気をつけてお読みいただきたい。 まず、悪かった点から書いてしまおう。 ・短い ステージは全29面である。 初代FMが30面までだったが、それとも違い、話の深さが無い。ステージ数で比べたFM1にしても、スーパーファミコンのゲームだ。しかも最近PSに移植された際に、USN視点から見たストーリーを追加し、合計で54面にまで増えた。 FM3になると、アリサ編エマ編を合わせると70〜90面はあったと記憶している。 FM2でさえ、30面ちょっとはあった。 初のPS2作品となった結果が、一番ステージが少なく、一番話に深みがないと来たら、これは落胆するしかない。 ・ストーリーの練度が足りない フロントミッションシリーズは、常に薄暗さが付きまとう独特の雰囲気を持っている。この作品にはそれが無い。無いのが悪いとは言わないが、その上でストーリーに練りが足りないのがまずい。 過去のシリーズは、必ず「今まで敵だったと思っていたものが敵ではない」というタイプのストーリー展開があり、明らかになる陰謀や黒幕というのがあった。これまた、この作品にはない。 ネタバレになってしまうかも知れないが、私のように期待するだけ期待して、落胆が大きくなってはつらいだろうからあえて書くと、最初に怪しいと思った奴は現に怪しいし、最初に敵だと思ったらそいつが敵であり、他の黒幕なんぞは一切登場しない。 エリザ編だと、序盤で「奴が敵だ!」と思ったら、ず〜っと、そいつを追いかけ続けるだけの話です。 ダリル編はまだ話として面白いというか、キャラクターが活き活きとしているので大丈夫。 ・機体の差別化がされていない。 これまでのシリーズではヴァンツァーには左右の腕と、胴体、足の四パーツが存在し、腕は命中率を、足は回避率と移動を、胴体は出力を、それぞれ担当しており、パーツには全て重量と防御力とHPが設定されていました。 HPの高いパーツや防御力の高いパーツは重量も重く、出撃可能重量を超えてしまうと装備できません。それを補うために出力の高いボディーを選んだり、軽いパーツをつけたり、武装を最小限にしたりという選択がありました。 でも、今作では防御力の概念がない。 実際プレイしていて思ったのは、その時に買える最高出力の機体以外、買う必要がないという事。防御力が設定されていないし、HPの差も微々たるもの。こうなれば最高出力でゴリ押しするのが一番楽。 なんて面白くない選択でしょうか。 機体に限らず、「数値にして十前後、重量が軽いだけで凄く弱い」というパーツがしょっちゅう出てきて、誰が趣味以外でこんなのをつけるんだろうという物が多かったです。 ・キャラが薄い ダリル編のキャラは個性的なんですが、エルザ編のキャラは凄く印象が薄いです。 デュランダルのリーダーであるジードは元将校ですが、なぜ40代の彼が既に退役してデュランダルにいるのか、エルザは元フランス軍なのに、なぜデュランダルに入ったのかなど、一切が語られません。設定を活かすことなく、見事なまで「設定」で終わらせてしまいました。特にジードなど、途中で登場するイギリス最強の空挺部隊の指揮官とタメ口で喋っていたりするので、かなりの実力者で階級も高かったと思われるのですが、それと匂わせるエピソードもありません。その他のキャラも、なぜその部隊にいるのかという動機は一切不明で、唯一、元ザーフトラ軍にいたラトーナという女性パイロットのみが、わずかに設定を活用して終わり。 敵キャラにしても――というか、ラスボスからして動機が甘い。全ての敵キャラが「え? お前の戦う理由ってそれだけ?」という程度の動機しか持ち合わせておらず、人間としての感情が見えないキャラばかり。 そのせいか、それともスタッフの印象付けが下手なのか、死んだと思ったキャラが生きていて、いつ死んだか解らないキャラが死んでいるという事も多かったです。 てか、今思い出してみたら名前のある敵が6人しかいないような……。そのうち3人はホンマに端役だし…………。 そして、コレはネタバレになるので、文字色を黒で書きます。読みたい人は反転させてください(ctrl+Aまたは、文字列を選択)。 ↓ココカラ ・FM1のキャラ、フレデリックとマリアが出てきた意味がなかった ファンサービスにしても、足りなさすぎ。居ても居なくてもいいキャラというより、居た意味が解らないキャラで終わった。 特に、マリアはなぜそこにいて、なぜそういう行動を取っているのかが一切不明。PS版FM1をやってない人だったら混乱するであろうほど、無意味なキャラだった。フレデリックは「ま、新聞記者なんだね」という許容範囲にはあるが、FM1の事件の後、いわばヒーローとなった男にしては、あまりにも普通――というより、三流記者に見える。 ・主人公が二人なのに…… え〜…………このエルザとダリル、最後まで会う事はありません。エンディングでも会いません。 作中で、エルザはある事件の証拠を握るため、ダリルは国外に出るために、お互いを利用しあうだけで、顔も見ずに通信機で数度会話するだけです。 話も「離れた所で絡み合う事件!」という程ではなく、ECが舞台であるエルザの事件の犯人と同じ組織が、なぜかダリルの舞台である南米にもいたよってだけで、よく考えたら、なんでその組織が南米にいたのかも解りません。必然性がないっていうかね。無理やり偶然を繋げてしまったという感じ。 ・敵がいない さっきもちらっと書いたが、名前のある敵キャラは、グレーザー将軍、ヴァグナー、イワノヴナ、バビロフ、ドランツ、デムチェンコという六名の他は、名前も忘れた輸送隊のオッサンのみ。 このうち、デムチェンコはとあるステージで一度グレーザーと喋るだけで、戦場にはあらわれず、何者でどういった地位かというのも明らかにはされない。ただの脇役である。バビロフ、ドランツはそれぞれイワノヴナとヴァグナーの副官なのだが、それだけである。副官ゆえのエピソードやらドラマやらは一切存在しない。名前も忘れた輸送隊のオッサンは、まあ名前も忘れられる程度のキャラという事で(ぉぃ つまるところは、グレーザー、ヴァグナー、イワノヴナしかまともな敵がいない事になる。 これを受けて、次の項目。 ・設定が何もいかせてなく、逆にリアリティをなくす結果となっている エルザはデュランダルの新入隊員であり、まだ22歳の女性である。それなのに、デュランダルが動く際は何故か彼女が全てを決める。隊長のジードでさえ「どうするエルザ?」と聞きまくる。また、天才的なコンピューター技術者という設定のハーミーズは20歳である。彼は命令があろうとなかろうと、とにかくハッキングばかりしている。それも、政府やら別の国やらにである。越権行為どころか100%犯罪である。しかし周囲はそれを容認し、時には焚きつける。 ついでに言うと、デュランダルがECの会議で活動停止処分を受ける事があるのだが、そこでもなぜか彼らはECの決定を無視して動き続け、イギリスの首相やら次官やらが許可を出したら嬉々として大義名分を得たという顔でおおっぴらに動く。デュランダルの本部はイギリスにあるという設定だが、あくまでもECの組織のはずだ。いくらなんでも無法すぎるぞ、この組織。 そして、先ほども書いた敵の不在。以下は完全にネタバレになるので注意すべし。 グレーザーはドイツ軍准将で、その部下ヴァグナーは特殊部隊ブラウネーベルの隊長である。しかし、こいつらはドイツ人じゃない。スパイなのだ。 グレーザーが本国から受けた命令は、ポーランドの資源基地を破壊し、ECを資源不足にした上で主な輸入先であるUSNとの関係を悪化させ、ECが本国に資源の輸入を頼らざるを得ない状態にすることである。ようは、「本国はお金がないからECに資源を売りつけたい。となると、自前で資源を調達できる基地は邪魔で、メイン取引先であるUSNも邪魔、どうにかしろ」って命令なわけだ。 なんとも情けない命令だが、グレーザーはそれを実行し、見事に成功させる。 オープニングの時点で(ぇ そう、グレーザーが本国から受けた命令の殆どはオープニングで成功しており、ゲームが始まって数話で完遂しているのだ。 それ以降のグレーザーが取るべき行動は、資源基地を襲撃した本国の部隊を逃がし、存在を隠蔽するために、あくまでも「調査を任されたドイツ軍将校」として動く事である。 だが彼はそれをしなかった。疑われたと思えばすぐに姿を消してしまうのだ。ヴァグナーを筆頭にブラウネーベル隊をつれて。 ここで疑問になるのは、ブラウネーベルという特殊部隊全員が敵に回っている事だ。ドイツ軍の部隊なのに、人員が全部スパイ、こんな事はありえるのだろうか? ドイツ政府が陰謀に絡まない限り不可能だと思うのだが、作品中ではドイツ政府は「知らなかった」という扱いで終わっている。なんともお粗末な話だ。 さて、このグレーザー准将、何をするのかと思いきやこんな事を言い出します「わしの戦略がどこまで通用するのか試したい(意訳)」 さっさと本国なりブラウネーベルなりが止めたらいいのに、当のブラウネーベルの隊長ヴァグナーはこう言います「デュランダルがなんで強いのかが解らん。私はそれを知りたいから戦う(意訳)」 一方、何らかの作戦で何故かベネズエラにいるイワノヴナ女史はこう言いました「戦争って楽しぃ〜♪ 私強ぇ〜!(意訳)」 これが、本作品での敵キャラの戦う動機です。 自分の力はどれほどのものか、強いはずの俺がこいつらに負けるのはなにか、私が強いから戦争が楽しい。 ただでさえ敵キャラが少ないのに、その全てが「他人を見下して自分の力を過信している」という共通項を持っている。 まったく共感できず、悪や敵として闘志を燃やすというのも、それ以前に戦う動機を知った時に「なんで?」というのが先に出てきます。 役割分担としてはグレーザーがかませ犬、ヴァグナーがエルザ編ボス、イワノヴナがダリル編ボス(ラスボス)という事になる。 正直に言うと、「私はこんな奴らと戦うためにずっとこのゲームをやってきたのか」と思わんでもない。 いくらなんでも、薄いにも程がある。 一応ヴァグナーに関してだけは、ドラマが生まれるかなと期待するシーンもあったが、それも曖昧なまま終わってしまった。 具体的に言うと、ヴァグナーの目である。彼はある状態になったときに眼が赤くなる。それにどんな秘密があるのだろうと、殆どのユーザーは期待しただろう。答えは「ただの目の病気」である。ふざけるのも大概にして欲しい。 ↑ココマデ この他には、兵器のメーカーが違うのに兵器のグラフィックが同じで色を変えただけというのが目立ったり、ショップでの売買にユーザビリティの悪さを感じる事があったくらいですね。 流石に、FM2であった擬似ハッキングやFM3の擬似ネットワークのようなものはありませんでした。 FM3の擬似ネットワークはそれだけでゲーム1本分くらい楽しめる物だったので、FM4でも期待したんですが……ま、年代的にムリがあるわな。 次に良かった点を。 ・バックパックの差別化 今まで、バックパックは追加出力かアイテム入れかというだけの存在でした。 それが、今作では全然違う。バックパックを戦略の主軸に入れないといけない事も多々あるほど、種類と用途が増えました。 種類は全部で七種類。 ターボ、アイテム、ジェット、EMP、通信、リペア、センサーです。 ターボはその名のとおり、追加出力用です。重武装をさせるなら必須。 アイテムもその名のとおり、アイテムを積載するためのもので、これにアイテムを詰め込んで戦うわけです。 とはいえ、ターボも微量ながらアイテムを詰めるので、こちらの用途とすれば、各種弾薬を詰め込むことですね。 ジェットは、ジェット噴射で決められた移動範囲を高低差や障害物を無視して移動できます。 前に敵がいようとも飛び越えますし、建物があろうとも飛び越えます。 また、ステージによっては建物の上に乗って戦う事も出来ます。 私は建物の上からライフルで狙撃してました。 EMPはこのゲームのキモかもしれません。相手の機体にステータス障害を与えます。 障害は「移動力半減」、「移動不可」、「攻撃不可」、「バックパック使用不可」、「リンク不可」、「ミサイル誘導不可」、「全行動不能」です。 だいたい4マスくらいの射程距離を持っているので、ある程度敵に近づいてから使用する事になりますが、持続ターン数は3〜5ターンあるので、相手を全行動不能に出来れば、ほぼ勝ちは決まったものです。ただし、相手も多用してきますが。 また、EMPには「アンチロック」という機能があり、EMPバックパックを持った仲間に防御リンクを張った状態で、側にいる事により、敵のミサイルを一定回数だけ強制的に外させる事ができます。 通信は、デュランダル輸送機を呼んでのサポートをしてもらうというバックパックです。 サポートの種類は四つ、爆撃、補給、防御属性追加、サルベージ。 爆撃は、ポイントを指定すると、指定した次のプレイヤーフェイズ終了時に高威力回避不可の爆撃を行うというもの。相手を爆撃ポイントに誘導したり、そこに誘い込んだまま逃がさないようにするという戦略が楽しいです。 補給は弾薬を積んだコンテナを投下するというもの。コンテナにはHPがあり、敵の攻撃を喰らったり、一定数の弾薬を補給すると壊れます。 防御属性追加は、炎熱・衝撃・貫通の3属性のどれかを、指定した範囲にいる全ユニットに追加するというものです。出撃前に「敵は多分マシンガンばかりだろう」と踏んで、ヴァンツァーの装甲を貫通耐性にして出撃すると、相手はミサイルばかりだったという際に「うわ、炎熱防御!」てな感じで使います。いや、あまり使いませんでしたが。 サルベージは通信バックパックを持ったキャラに対して、防御リンクを張っておくと、機体が破壊された後に復活できるそうです。設定はしていたんですが、一度も発動することなくクリアできたので、効果のほどはわかりませんでした。 リペアの効果は、HP回復、パーツ復活、障害除去の3つ。そのまんま、HPを回復したり、壊れたパーツを復活させたり、相手のEMPによって起こされたステータス障害を治します。 センサーは、ミサイルの射程距離を伸ばす事が出来ます。例えば、格闘攻撃をメインとする機体にセンサーバックパックを背負わせ、敵陣に突っ込ませます。そうすると、そのバックパックから一定の範囲がミサイルの射程距離に追加されます。つまり、ミサイル固有の射程距離のほかに、センサーバックパックの周囲にも撃てるようになるという事です。10マス離れようが、20マス離れようが、センサーバックパックさえあれば、そこにミサイルを撃ち込むことが可能です。 ステージにあわせて使い分けるというのがベストなので、変なこだわりがないのであれば、一度次のステージに進み、敵がどの属性武器を持っており、どう動くのかなどを見てから、再セットアップするのが吉。まあ、わざわざそんな事しなくてもクリアは出来ますが。そうしたほうが楽だろうなという事で。 なお、ダリル編ではリペア・ターボ・アイテムの3種しか出てきません。残りのは、デュランダルが戦術研究機関だからだと納得してください(敵も使ってくるけど)。 ・武器の差別化 今回のFMは武器の性質がきちんと設定されています。 マシンガンだと、射程距離が1-4マス。攻撃に必要なAPは4で、一度の攻撃で2回の連射が出来る(つまり、APが8残っていれば、2回撃って0になる)。弾は貫通の攻撃属性を持ち、敵のパーツにランダムにダメージを与える事が出来る。 ショットガンは、射程が1-3と狭いが、必要APは3と安い。これまた一度の攻撃で2連射が出来る。弾は衝撃属性で、敵の全パーツに均等にダメージを与える事が出来る。 ライフルは射程距離が1-8と広く、消費APも6と高い。しかし、相手の射程外から攻撃が出来、ダメージも大きい。弾は貫通属性で、単射で一発だけを撃つ。マシンガンやショットガンと違い、両手で構えるため、両手パーツの命中率が大きく関わってくるし、片腕が壊れれば命中率は激減する。 バズーカーは、ライフルと同じく射程距離が1-8で、APも6である。弾は初撃が衝撃属性だが、着弾後に爆発するので、その際に炎熱属性の追撃が行われる。命中率は低いのだが、1箇所に大ダメージを与えた後で、複数箇所に小さいダメージを与えれるため、使い勝手はいい。こちらも両手武器なので、基本はライフルと同じである。 ミサイルは射撃武器と違い、手ではなく肩に装備する。射程距離は6-8マスで、消費APは10と大きい。そのぶん、威力も高く、また命中率は100%である。腕パーツの命中率は無関係で、ミサイルに固有の命中率3種が設定されている。種類としては「追尾性能絶大」、「障害物が無ければほぼ命中」、「障害物が無くとも外れる事がある」の3つだと思っていただければいい。デメリットは、重たい事と弾数が少ない事。 グレネードも肩武器。射程距離は4-6で、その範囲の一転を指定すれば、そのポイントから周囲3マスを爆撃する。指定ポイントに近いほど威力が高いのだが、敵味方関係なくダメージを与える。消費APも12と高く、重量も重い。 ロケットは基本はグレネードに似ているのだが、射程距離は8-12と広い。その射程距離内の一点を指定するのもグレネードと似ているが、攻撃範囲はそのポイントから3マスというわけではなく、広大な範囲を持つ(筆者は隠し武器のロケットしか記憶していないが、その範囲は指定ポイントを中心に周囲5マス以上あったと思う)。また、中心に近くともダメージには変わりなく、範囲内にランダムにダメージを振り分ける。消費APは14と全武器中最高で、攻撃属性は当たり前だが炎熱である。 格闘武器は、針を打ち出すパイルバンカー、手に握るナックル、棒状のロッドの3種類があるが、基本は同じで射程距離は1マスのみ。消費APも1と軽い。攻撃属性はナックルとロッドが衝撃で、パイルバンカーのみ貫通属性である。注意すべき事は、今回は旧作品のように素手で殴る事は出来ず、格闘専用の特殊アームもないようだ。 シールドはその名のとおり、盾。使用回数と、ダメージを軽減するパーセンテージが決まっている。盾を使用する消費APは2である。 なお、ダリル編ではミサイルは出てきません。同じように、エルザ編ではグレネードとロケットが出てきません。 ついでに、ダリルの初期武器は格闘ですが、ダリル編のラスボスには格闘武器が使用できません。 ・通常グラフィックの質の高さ 背景や各ヴァンツァーの作りこみは素晴らしく、常にPS時代のムービーのような状態で動く。 恐らく、このレベルまで来たら後の課題は、いかに機体や背景の種類を増やすかだろう。 ・ステージの状態変化 今回は、ステージごとに時間帯や天候が決められている。 時間の種類は、朝・昼・夕方・夜の4タイプで、天候は晴れ・曇り・小雨・雨・雪・吹雪の6タイプがある。 例えば、夜のステージだと命中率は低下し、長距離の武器になれば、さらに命中率が下がってしまう。しかしメリットもある。センサーバックパックを背負っていた場合、センサータイプをレーダーに切り替えておくと、有効範囲が広がるのだ。つまり、敵の命中率が下がった状態でセンサー機を突撃させ、こちらは遠くから悠々とミサイルを撃つという事がやりやすい。 天候は、吹雪以外は特に影響がないらしい。吹雪の場合は射撃武器の射程距離が短くなるので注意。また、センサーバックパックのセンサータイプをソナーにしていた場合、雨や雪では有効範囲が狭くなってしまう。 また、この時間と天候だが、ターン経過と共に変化する。夜に戦っていて長期戦になると、夜が明けるし、雨も小雨になったりする。逆に雪が吹雪く事もある。状況の変化に応じて、戦法を切り替えて戦う必要がある。 ・リンクシステム 今作一番の目玉システム。 アタックリンクとディフェンスリンクというものが存在する。ややこしいので、簡単な例を挙げながら紹介しよう。 例えば、AがアタックリンクでBとCを指定しておく。すると、Aが敵に攻撃した際、BとCも可能ならば攻撃に参加する。つまり、Aがショットガンで敵のパーツを撃ち、Bがライフルで足を壊し、Cがナックルで大打撃を与えるという事が、一度の戦闘で行われる。この際、戦闘終了時に行動済みキャラとされるのはAだけである。また、BがアタックリンクでAとCを指定した場合、Bが攻撃した際にAとCが攻撃に参加する。これはリンクキャラが既に行動済みでも、APさえ残っていれば強制的に参加する事となる。 ディフェンスリンクは、アタックの逆である。CがAとBをディフェンスリンクで指定しておくと、Cが攻撃された際にAとBも反撃を行う。先ほどの例でCは格闘タイプの武器を持っている事になっているが、このCが4マス離れた敵にマシンガンで攻撃された場合、C自身は反撃できない。また、射程距離が3マスしかないショットガンを持ったAも反撃できないとする。しかし、射程距離が8あるライフルを持ったBがいると、そのBが反撃を行う。無論、ABCのどれもが反撃可能ならば、全員で反撃を行う。 また先述のEMPバックパックの「アンチロック」や通信バックパックの「サルベージ」はこのディフェンスリンクで設定をする必要がある。 これらのリンクは、敵も多用してくる。下手をすれば、ザコ敵3匹の攻撃にそれぞれ毎回ボスが便乗し、ボスの攻撃に3体のザコ敵が便乗してくる事もある。逆に、こちらがザコ敵を倒そうと攻撃すると、ボスに反撃されることもある。なるべく敵にはリンクをさせず、こちらはリンクして戦うというのが、メインの戦い方になるだろう。 リンク設定にはリンクポイントというものが必要になるが、それを持っているキャラと持っていないキャラがいる。リンクポイントも少なければ一人しかリンク登録できない事もある。その際には、これまた先述のEPでランクを上げたり、資金でコンピューターを買ったりして、リンクポイントを購入可能な状態にしなければならない。リンクポイントが購入可能になったら、そこからさらにEPを消費して、リンクポイントを買う必要がある。色々と面倒なことだ。 なお、リンクシステムにより、リンクならではの爽快感が生まれたのだが、その分、シリーズを通して存在していた、スキル連鎖の快感は無くなってしまった。一応、リンクメンバーでスキルを連鎖していってダメージ補正が掛かるという状況もあるのだが、やはりスキルの爽快感としては物足りない。 ・戦略と戦術の組み立て まず、最初に与えられたステージの状態と勝利条件から戦略を立てて戦う。これは通常のSRPGでもそうだろう。だが、今回のFMはステージの状態が変化する事があり、勝利条件の変化もある。最初に立てた戦略が通用しなくなる事があるのだ。ここでまた戦略を組み立てなおす必要が生じる。これは中々新鮮だ。 そして、実際に戦っていると、敵の予想外の行動や強さに驚く事がある。なんせ、敵にもEMPやリペア、センサーなどのバックパックを持った奴がわんさかいるのだ。それに大して、臨機応変にこちらのバックパックと武器特性などを考慮して対応する。攻撃を仕掛ける順番なども考え、持っている装備の限りに戦術を駆使して戦う。 今までのFMには無かった戦い方である。 これがとても楽しい。 敵が強めに設定されているのも面白い。 総合して考えると、ちゃんと面白い作品である。 欠点はシナリオ(キャラクター性を含む)以外には特に見つからない。不満は細かい所で多々あるが、例えばそれは「スキル連鎖の爽快感」や「ヴァンツァーから防御力の概念が無くなった事によって、差別化がなくなった」といった事である。しかしこのグラフィックやリンクシステムの代償と考えれば、不満ながらも納得はできる。ただ、PS2になったのだから、もう少し頑張れたはずだ。 でもやはり、シナリオだ。 オープニングで興奮し、途中ハマリまくり、唐突に終わった。 正直、未完成品なのか、それともFFのようにインターナショナル版でも出すのかと疑ってしまうほど、フロントミッションとしたら考えられないほど、ストーリーもキャラクターも底が浅く、練りこみが足りない、不満な出来だった。 その他がほぼ満点に近いぶん、基本中の基本である、「お話」が甘い事で印象が必要以上に悪くなった。 最大の欠点は、出てくるキャラがスカスカのからっぽで、余計にシナリオの駄目さが引き立つという事。本当にダリル編の数名を除いては、まるっきり中身がない。 残念な作品である。 巧いライターの手にかかれば、もっと面白く、もっと深く、もっと心に残る話に出来たはずだ。素材はいい。料理人が失敗してしまっただけだ。 レビューの点数の詳細は、戦闘システムだけなら9、ダリル編の味方キャラで8、そこに遊び要素の無さやシナリオの浅さ、その他のキャラの浅さを引いた結果、6.0。しかしやはり、その浅さ意外はとても良かったので、色をつけて7となった。 |