なんでもレビュー
天使と宇宙船 |
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出版:創元SF文庫(東京創元社) | 著:フレドリック・ブラウン(訳:小西宏) | 定価:630円(税込み) |
短編SFと推理小説の巨匠、フレドリック・ブラウンの短編集。 中編からショートショートまで全16編を収録。 元々私がこの本を購入したのは、当時編集さんに見て貰うコンペ用短編を準備していた頃に、講師殿から「短編ならフレドリック・ブラウンを読んで勉強しろ」といった事を言われたのが切っ掛け。 いざ読んでみると、面白い。 読みやすい話から読みにくい話、長い話から短い話まであるけれども、総じて出来が良い。 大概この本をレビューする際には中編「ミミズ天使」をメインに紹介しているのを見かけるのだが、私はそう好きな作品ではないので別の話を紹介しよう。 短編「不死鳥への手紙」は、核戦争に巻き込まれて突然変異的な不死を得た男の手記。45年に1日分しか歳を取らない男が、数百年、数千年、数万年の時を見続け、淡々といくつもの文明が滅び、原始に戻って再び発達し、また滅ぶという繰り返しを手記につづっていく。特に何があるというわけでもなく、本当に淡々と、悲観から達観へ変じながら語られるだけという話なのだが、つい引き込まれる。 また、ショートショートの出来がすばらしい。 皮肉たっぷりのSFショートショートがいくつも収録されているのだが、本当に「あ〜あ」ってな見方でニヤリとするようなものばかり。普段SF短編やショートショートを読まない身としては新鮮な面白さだ。恐らく星新一が好きな人ならば、これも結構好きなのではないだろうか? |