なんでもレビュー

クロノ・トリガー(PS版)
メーカー:スクウェア(現スクウェアエニックス) 機種:プレイステーション 点数7.6
価格:4800円(税別)
廉価版:2500円(税別)
ジャンル:RPG 発売日:1999年11月02日
廉価版:2002年01月17日
公式サイト:http://www.square-enix.co.jp/games/ps/trigger/frame.html


 
元々は1995年に発売されたスーパーファミコン(以下SFC)ソフト。
 当時はライバル会社であったスクウェアとエニックス。その主力ソフトである
FFの坂口博信ドラクエの堀井雄二に加えて隆盛を誇ったドラゴンボールの鳥山明が手を組んだドリームプロジェクトとして話題を呼びました。
 それが4年経って、続編「クロノ・クロス」発売に合わせてPS版として復活。今回のレビューはそのPS版です。


 
ストーリーは、ファンタジーとSFを融合させたような感じで、「時間」というものがネックになっている。
 AD1000年、ガルディア王国の建国千年祭で主人公クロノと偶然出会った少女マールが、クロノの幼なじみルッカの発明実験に巻き込まれて400年前に迷い込むところから始まる。
 様々な時代を行き来するうちに、彼らは荒廃しきった未来の姿に驚く。調べるうちに彼らはAD1,999年に「ラヴォス」という存在によって世界が滅んだことを知る。彼らはひょんな事からAD600年の人間対魔王軍の戦いにおいて、魔王がラヴォスを作ったのではないかという事を知る……といった感じで、
様々な時間を移動し、未来の世界を救うために歴史を変えていこうと奔走する物語
 移動できる時間は7種類。
 原始=BC6,500,000年、古代=BC12,000年、、中世=AD600年、現代=AD1,000年、世界崩壊=1,999年、未来=AD2,300年、時の最果て=∞。
 ただし、世界崩壊と時の最果てはマップはありません。世界崩壊はラヴォスが待ち受け、時の最果ては様々な時間へ移動するための中継地点。
 原始から未来までのそれぞれの世界にはマップがあり、その長い時間のなかで変わる地形、変わらない地形など多々あって面白い。
 また、かなり最初の段階で「ラヴォス」というラスボスの存在が明らかになるように、
存在を知ったその時点からいつでもラスボスに戦いを挑める
 これにより、
エンディングが様々に変化する。今でいうマルチエンド方式だ。エンディングは大きく分けて12種類あり、2つあるメインエンディングもさらに2種類に分かれるので、実質14種類のエンディングがある。
 一度クリアすると
「強くてニューゲーム」というのが追加される。これを選ぶと、最初からクリア時のLvとアイテムを維持したまま最初から遊べるうえ、今まではムリだった時点からでにラスボスに挑めるようになる(たとえば開始10分でラスボスと戦ったりも出来る)。

 元が古いゲームなだけに、どうしても古くさい感じは否めないけど、それは同時に懐かしくもある。
 ドットとSFCの限界に挑んだグラフィックは流石。音楽に至っては今聞いても良い曲が多い。
 
戦闘システムはFFと同じアクティブタイムバトル(以下ATB)を採用。正確にはそれを進化させたATBver2だそうだが。バトルゲージが常に上昇し、溜まった者から行動できるというものだけど、私はこれが昔から苦手。そういう人のために、アイテムなどの選択中はゲージが止まるというウェイトモードもある。
 また、通常のRPGで見る
「魔法」のかわりに「技」が用意されている。設定として魔法は遙か昔に滅んだからなのだが、ある事をすれば魔法も使えるようになっていく。使える技は魔法を合わせて各キャラ8つ。
 技には属性と範囲が定められている
。敵一体に攻撃する「単体」、敵円範囲に攻撃する「円」、直線上の敵全てに攻撃する「線」、敵全体に攻撃する「全体」。円と線に関してはちょいとややこしくなるので後述。
 そして、面白いのが
「連係技」。これは二人技三人技があり、例えば二人技だとクロノとマールならば、円範囲攻撃である「かいてんぎり」と単体回復技である「オーラ」を組み合わせて「かいてんオーラ」という味方全員回復という技になる。三人技だとクロノ、マール、ルッカで、「サンダガ」・「アイスガ」・「ファイガ」の三属性最大魔法を組み合わせて「ミックスデルタ」という冥属性魔法に変化する。こういった技の組み合わせを見つけるのも楽しみの一つだろう。
 味方になるキャラクターは基本6人だが、選択しだいでは強力な7人目の仲間が加わるケースもある。

 先ほどもふれたが、
マップが中々面白い
 フィールドマップは小型化されたパーティーがてくてくと歩いていくのだが、町などが「〜の町」などではなく、フィールドと地続きになっている。フィールドにそのまま町並みが存在しており、民家の入り口などに接すると「民家」という文字が出てくる。そこでボタンを押すと中に入れる。これはつまり、一見何もない所に触れてみると探していたダンジョンだったという事になる。また、
フィールドでは戦闘がない。よって気楽に世界中を歩き回れる。
 ダンジョンマップ
は半アクションRPGのような感じで、一部強制戦闘もあるが基本的には敵が表示されている。ウロウロしたり遊んだりしているモンスターにキャラクターが接触すると戦闘が始まる。その場合も戦闘画面に移行せず、そのままの位置で戦闘スタートとなる。この時の位置関係が、先ほどの技で触れた円や直線といった範囲に影響する。例えば敵が3匹いたとして、開始時には円攻撃では2匹にしか当たらない。ところがちょっとでも敵モンスターが動いて円の範囲に入ったら3匹全部に当てることが出来る。先ほどのATBと相まって、スリリングな戦闘が楽しめるわけだ。
 ダンジョンも適度な難易度と長さが殆ど。敵は……弱点や特性を見切らないと少々難しいのが多い。


 SFC版との変更点は、アニメーションムービーとおまけモードの追加の2点で、そう大きな変化はない。
 アニメーションムービーはハードがPSなので高品質とは言い難いが、雰囲気は出ている。特に、SFC版エンディングの後に流れるムービーが感動を増幅させる。ただキャラクターの声が無いのは残念だった。元々主人公クロノは堀井雄二の意向でセリフがないので仕方がないのかもしれないが、せめてかけ声とかは欲しかった。
 おまけモードはムービー鑑賞、イラスト鑑賞、音楽鑑賞の他、モンスターデータ、各ボスのデータと攻略法、宝箱の位置、必殺技と連繋技のデータ集、各エンディングを見るためのヒントなど。ただし、最初は解放されておらず、何度かクリアしないといけないようだ。モンスターやボスのデータなどは一度のクリアで見れるようにしないと意味がないと思うのだが……。あと、このモードではエンディングのヒントは見れるがエンディング自体は見れない。これは惜しい。
 なお、
SFCからPSにベタ移植したせいで解き方がわからなくなったイベントが1つある
 ゲーム終盤で起こるルッカの重要なイベント(しかも再挑戦不可)なのだが、そこで入力しなければいけないパスワードがそれだ。
 私はこれで失敗したので、あえてここに載せる。ルッカの父が「パスワードは我が最愛の人の名前」というメモを残しているのだが、彼の妻の名はララである。つまりララを入力しろということだ。
SFCのボタンはLRとXYABなので、LALAと入力すれば良いと解る。しかし、PSのボタンはL1L2R1R2と□△×○。これでは何のことか解らない。正解はL1×L1×と入力。この点は仕方がないとは言え、わかりにくすぎるうえ、SFCを知らない世代だとまず思いつきもしない。


--総括--
 ストーリーの完成度は高く、特に演出がとても上手い。成熟しきったSFCの技術を余すことなく使い切ったという感じだ。
 キャラクターにも好感が持て、マップをちょろちょろ歩き回るのも楽しい。
 また、その世界の歴史を感じられ、手を加えられるというのがとても面白い。例えば、現代に傲慢な町長がいれば、過去でその先祖に親切をすると感動した先祖が家訓を残し、それが影響して現在の町長がとてもいい人に変わる。ある特殊な宝箱を過去で開けようと思ったが思いとどまり、現代に戻ってから開けると中身が進化していたりと、ほんの些細な事がちょっと影響する感じは新しかった。
 無論、現在では古いソフトでグラフィックもSFCだからショボイ。だが、そのショボイながらも味と職人技はある。ゲームとしての完成度はかなり高いのではないだろうか。
 惜しむらくは、最後の最後がダルいこと。
 私はVジャンプの攻略本を見ながらプレイしたが、通常のダンジョンは2ページしか使わないこの本でさえラストダンジョンには10ページも使っている(ちなみに、この攻略本は重要な所で誤植が多い。大変惑わされた)
 。ボスの数に至っては7体で、しかも7体目を倒せば強制的にラヴォスとの戦いになる。しかもラストダンジョンから挑むラヴォスは13回戦わなければいけないので、合計でボス20体だ。今までには無かった長さのダンジョンに、強いザコ敵、多いボス、かなりしんどい。達成感はあるが、それ以上に疲労するので、ポイントポイントでセーブして、数日に分けて攻略したい。特に5〜7体目まではセーブも回復もできない連戦なので注意。ラヴォスも最初の1〜9回目までは戦うたびにセーブこそ出来ないが回復やメンバーチェンジが可能だが、それ以降はノンストップである。長い。
 しかし、やはりシナリオと演出、キャラクター付けは良くできており、ちゃんとエンディングで達成感と共にしっかりと「終わった!」という感覚がもたらされる。冒頭でも堀井・坂口・鳥山のドリームプロジェクトと書いたが、それ以上にこのスタッフ達が夢を持って作ったという意味でのドリームプロジェクトだったのではなかろうか。
 今回の点数はシナリオ等には9点をあげたいのだが、戦闘やダンジョンのシステム、またいささか古い事とベタ移植過ぎたこと、それに加えてロードや画面切り替えの速度がもうちょっと頑張れたんじゃないかということで、マイナスして7.6にした。それでもおすすめには変わりないので、未プレイの人は攻略本無しでじっくりと楽しんで頂きたい。良作です。


 ps.余談だが、この作品は後に幻のサテラビュー専用ソフト「ラジカルドリーマーズ」というノベル形式の続編が作られる。当時はもとより今ではまず手に入れるのは不可能となった作品だが、この中で「トリガー」のキャラのその後が語られる。「トリガー」のキーアイテムの謎やその後など、あまり明るい話ではなく、どちらかというと重たい話だそうだが、どうしても又聞きにしかならないので割愛する。
 さらにその後、スタッフが再結集してPSで続編を作ろうとするうちに出来上がったのが「ゼノギアス」である。あまりにも違って来たから違うものとして完成させてしまったようだ。現在はナムコの「ゼノサーガ」シリーズとなっている。
 また更にその後、今度こそ「トリガー」の続編を作ろうとしてようやく完成したのが「クロノ・クロス」である。こちらも大変面白いソフトで、「ラジカルドリーマーズ」の設定を受け継いで作られた完全な「トリガー」の続編にして、新作。旧作を知らずとも楽しいのだが、知っていると少し泣きたくなるかも知れない。
 ちなみに、「クロス」は発売の前後に大作ソフトが重なっており、ファミ通のレビューで殿堂入りして連載攻略がされたにも関わらず知名度が低い……。

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