真・なんでもレビュー

エンディミオン
エンディミオン〈上〉ハヤカワ文庫SF
エンディミオン〈下〉ハヤカワ文庫SF
エンディミオン(ハードカバー)
cover
出版:ハヤカワSF 著:ダン・シモンズ(訳:酒井昭伸) 定価:上下巻各880円+税(ハードカバー版は3000円)

 待ちに待ったハイペリオン四部作の第三段!
 「ハイペリオン」・「ハイペリオンの没落」の二部作に続く、「エンディミオン」・「エンディミオンの覚醒」の新二部作の幕開けです。
 これはハイペリオンを読んでから読んで欲しいですねぇ
 SF好きの人の間ではハイペリオンシリーズで一番面白いとされてるのがこのエンディミオンです
(ちなみに、一番面白くないとされてるのがエンディミオンの覚醒だったりする)

 もう、本当に面白い。のめりこみます。

 話の設計としては、「追われる少女とそれを助ける青年vs追う勢力」という単純設計。
 ひたすら逃げて、ひたすら追う。基本はただそれだけなのに、ここまで面白くできる作者の構想力と想像力に驚嘆します。また、訳者もハイペリオンに引き続き酒井昭信氏なので、あいかわらず日本の小説であるかのように自然に読めます。

 まず、この作品は「ハイペリオンの没落」から三百年後の話。
 話が始まったとたんに語り手であるエンディミオンは「あなたがどんなつもりでこの文章を手にとったにせよ、十中八九、その目的は的はずれだ」と言う。
 ようはハイペリオンの続きを期待してたらアカンぞ、というわけだ。
 しかし、このエンディミオンが語る過去の話は、目的どおりであった。
 前作ハイペリオンに出てきたキャラクターのほとんどは名前だけでも出てくるし、ブローン・レイミア、ジョン・キーツ、領事、マーティン・サイリーナス、ルナール・ホイト、ポール・デュレ。A・ベティックなどは話の中にも関わってくる。
 ヒロインであるアイネイアーからして前作の登場キャラクターの娘なのだ。
 その少女が「スフィンクス」を通り、時を越えて三百年後の世界に来るというので、主人公エンディミオンはその少女を守るように言われる。それが物語の始まりだ。
 
 先ほど「追う勢力」と書いたが、それはキリスト教会パクス派というものである。前作ではキリスト教自体が消滅しかけていたが、それがどうして一大勢力に復権したのかなども、作中で語られる。
 この教会陣営のキャラクターも格好いい。
 主人公ロール・エンディミオンは熱血で向こう見ずの典型的なヒーロータイプだが、教会のフェデリコ・デ・ソヤ神父大佐は信仰と信念を持つ真面目な宗教家で、冷静で頼れる軍人である。
 両陣営とも好感が持てるキャラクター揃いだ。

 ハイペリオンの完成された世界観を使用し、かつての主役級たちをステップにした新しいキャラクターが生き生きと動き、作者と訳者の多彩な表現力がそれらの素材を巧く料理している。
 待ち望んだ甲斐がある。
 本当におすすめだ。ぜひとも前作とあわせて読んで欲しい。

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