TheAraniaStory
偽章《長き前奏曲》


あとがき

 長かったプロローグがようやく終わりました。
 ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

 11万文字強、原稿用紙にして267枚を越えてしまいました。
 開始当初は「150〜200枚の3話から4話構成になるかと」とか言ってたんですが、「一話50枚じゃ読み足りない」と言われて、ボリュームを増やしたが最後、こんな事になってしまいました……。楽しんで頂けたでしょうか?
 偽章という妙な言葉がついてますが、意味としましては、「物語の主人公はケッタルスではなく、この話は彼の本編ではない」というものです。読者を騙す意味合いもありますね。ケッタルスとクルストルのお話だと勘違いさせるといいますか……。
 この後、カーズとタトゥスが主人公の第一部へと物語は進みます。
 賞へ投稿する作品も書かなければいけないので、どうしても筆が遅くなってしまいますが、ご容赦ください。


 さて、このお話を語るに避けては通れない道、過去のバージョンについてお話しようかと思います。

 私が偽章《長き前奏曲》という物語を書いたのは、これで三度目+αです。
 一度目は、サイトを立ち上げて初めて書き始めたもの。
 これは、高校の学友にそそのかされて書いた小説まがいの物を元に、サイト用に書いた小説でした。
 当時大変お世話になったはるみさんという方に、「小説は最後まで書いて初めて『小説を書いた』と言える」と教えて貰った事がありました。それは小説家を目指す者の常識なんですが、当時の私はそんな事は全く知らず、文章を書き殴っていたらそれが小説だと錯覚していました。だから、もの凄く感銘を受けた言葉でした。そのため、書き終えた時――「了」とタイプした時の感動は筆舌に尽くしがたいものがありました。
 この一度目の「偽章」が、私が生まれて初めて書いた小説です。
 ちなみに、この時は「偽章・長き前奏曲」をドイツ語で表記していまして、タイトルから「ケッタルスの物語ではない」事を悟られないようにと、こすい考えをめぐらせていました(笑)

 二度目は、一度目のクオリティに納得がいかなくなったために書き直したものです。
 書き直しを決めたとき、既にこの物語は偽章、第一部の一章へ進み、第二章まで始まっていました。
 しかし当時の私は小説家になろうと心に決め、専門に進んでいました。そこで様々な知識と技術を得たのですが、そうなって来ると偽章のクオリティに納得がいかなくなってしまう。悩んだあげくに書き直したのが、二度目のものでした。
 書いている途中にどんどんと粗が見つかり、悩むポイントが凄まじい勢いで増えていきました。
 そして、書き終えて気づいたのは、偽章〜二章まで書いた所で設定に致命的なミスがあった事。
 構成不足で八方ふさがりになっていた時だったので、その解消も含めて、私はこの「アラニア」全てを公開停止にしました。

 そしてこの三度目です。
 専門も卒業し、日々に追われるうちに小説を書くペースが落ちていた私は、リハビリも兼ねてこのアラニアに取りかかる事にしました。
「作者はいつまでも納得をしない読者でもある」
 こう言われた事があるのですが、まったくもってその通りで、書きながらも「専門時代はこんな文章を書かなかった、もっと練っていた」、「なんでこんな表現しかできない」と悩み続け、何度も消しては書き消しては書きを繰り返しました。ようやく納得して発表しても、ひと月経って読み直せばやっぱり気になる所が出てくる(苦笑)
 常に難産です。それが、ようやく終わりました。
 二度目の偽章は、一度目を手直しする程度のものでしたが、今回の三度目は完全新作の感覚で読んでもらえるように頑張ったつもりです。過去の作品をあえて見ずに書きましたので、自分でも新作のつもりです。一部を除いてね。
 一部というのが、最終話です。
 唯一タイトルを過去のバージョンのままにしていますし、タトゥスの呪文や演出なども、昔のものを踏襲しています。詠唱部分は少し手を加えた程度で、禁呪の名前以外はまったく同じものを使いました。(ちなみに変更前の禁呪の名前は、六皇次元崩壊&フーリッシュハイエンド。変更後は六皇法壊&フーリッシュフィアルです)
 本来、あまり呪文の名前やら詠唱やらは書きたくないんですが、ここは昔から読んでくれた方へのサービスというか過去の自分の名残を残したかったというか……いまいち自分でもよく解らない気持ちで、「残そう」と思っちゃったわけです。やっぱり浮いてるかな?(笑)

 これを書き始める前後から、ネットでお世話になった方々、小説を読んでくれていた方々が次々にネットから引退していきました。
 この小説は、まず感想を頂ける事がありませんでした。なんせオフラインの友人の他は、片手で数えても指が余るほどでした。
 正直に言いますと、書きながら何度も、書くのをやめてしまおうか、サイトをやめてしまおうかと悩みました。読んでくれているかも解らないのに書き続けるというのは、とても不安なのです。それでも、完成させる事が私の義務です。一度扉を開いて、「こんな世界があるよ」と誘い込んだのですから、最後まで書く責任があります。もともと「書きたい!」という衝動から始まった物語ですしね。だから、一生懸命にとは言いませんが、一所懸命に頑張りました。
 それに今まで読んでくれていなくとも、完結したら読んでくれる人もいるかな? というほのかな期待もあったりなかったり(笑)

 +αの部分については、三度目の書き直しから半年後くらいに、再度文章構成をメインに書き直そうとしたものです。しかし一話目の再構成後、忙しくなってしまって約一年も作業が止まってしまいました。
 大学に入ったのと専門時代の師匠が亡くなられた事で、完全に休止状態となっていたのですが、年の瀬になって心機一転しようと二日で全話の再構成をかけました。二日だからといって手を抜いているわけではなく、一度読んだ人が再度読む苦労を味わわせないよう気をつけながら、フルに時間を使って打ち込んでみました。
 本来の設定以外で英語を使用している設定を修正し、また三回目の書き直し時に読者の方からご指摘のあったシルクの描写を強化しました。
 微々たるものですが、確実に質は上昇しているはずです。

 本当に長いお話となってしまいましたが、まだ本当の物語は始まっておりません。
 この物語は、カーズとタトゥスの物語がなぜ始まる事になったのかという、いわゆる「起点」のお話です。ですから、最終話のタイトルも「起点の終焉」なわけです。

 それでは、最後までこの偽章《長き前奏曲》を読んでいただき、ありがとうございました。
 面白いと感じて頂けましたら、Web拍手をクリックしてやってください。Web拍手は読者の反応を作者に届けるシステムですので、ただクリックして頂けるだけでありがたいです。
 メールBBSでもご意見や感想をお待ちしています。

2005年12/26 栗堀冬夜(Crymson)