最初に鳥がいた。 鳥は一つの卵を産んだ。 一つの卵からは、翼を持つ竜が生まれた。 次に鳥は一つの卵を産んだ。 一つの卵からは、天と石が生まれた。 翼無き天は、石の上に座した。 次に鳥は一つの卵を産んだ。 一つの卵からは、歩く花が生まれた。 花は種子を蒔き歩き、石は肥沃な大地となった。 次に鳥は一つの卵を産んだ。 一つの卵からは、猫が生まれた。 猫は風を生み、肥沃な大地は動き出した。 次に鳥は一つの卵を産んだ。 一つの卵からは、黒い魚が生まれた。 魚は水を吐き、水は川となり海となった。 次に鳥は一つの卵を産んだ。 一つの卵からは、精霊が生まれた。 精霊は万物に宿り、大地に生命が満ちた。 次に鳥は一つの卵を産んだ。 一つの卵からは、炎が生まれた。 朽ちたものは燃え、新たな生命を育んだ。 次に鳥は一つの卵を産んだ。 一つの卵からは、獅子が生まれた。 獅子は土を纏い、全ての獣を従えた。 次に鳥は一つの卵を産んだ。 一つの卵からは、二羽の鳥が生まれた。 鳳凰は炎を纏い、始鳥に死を告げた。 次に鳥は一つの卵を産んだ。 一つの卵からは、白い兎が生まれた。 兎は雪を着込み、世界を白く浄化した。 最後に鳥は一つの卵を産み、死んだ。 一つの卵からは、狼と卵が生まれた。 狼は、創世の終焉を告げ、始鳥の子らは世界を育てた。 終狼は空に浮かびし卵に吼えた。 いつか生まれ来る、始まりの鳥を懐かしんで。 いずれ終わりゆく、新しい世界を憂いて。 |